2016年12月23日金曜日

ライブドア事件を振り返ってみる (3) 「ライブドア事件10のミステリー」

ライブドアの本を次々に読んでいるわたしです.これで3冊目.

宝島別冊「追跡!ライブドア事件 残された10のミステリー」という長ったらしい名前の本です.

1冊目はマジメに事件の全容を書いた本でした.
2冊目はインサイダー(宮内)が書いた本でした.

今回のは別冊宝島ならではといおうか、ライブドアにまつわる様々な噂を集めた本でした.
闇紳士との噂、暴力団との噂、政治家との噂、海外プライベートバンクとの噂、海外タックスヘイブンとの噂、、、
ライブドア事件について噂話をしてもどれだけ意味があるのかなぁと思ってしまいましたが、そういう噂話オリエンテッドな構成になったのも無理からぬ部分があります.なぜならこの本は、公判がまだ始まっていなかった時期に調査・発売された(2016.4)本なので事件の広がりがどれだけなのかがまだ不明でしたから.(公判では政治家や暴力団は登場しませんでした)

全般的に「そりゃぁそういう見立てもあるだろうさ」という印象の週刊誌的な記事ですからサラッと読み飛ばしてオシマイでいいかなと.

しかしその中で秀逸だと思ったのが、井上トシユキという人が書いた、「ホリエモンとは何者だったのか?」という人格分析記事でした.
曰く、 (なるべく時系列に)
・高校生まで暗かった、親と不仲だった
・学生時代にすでにインターネット革命の使命感に燃えていた
・インターネット技術者として優秀であり、リーダーとしての統率力、プレゼン力もあった
・自信家であり、常に本気である
・プロセスが無く結論しかない
・フジサンケイとの喧嘩に勝ち、次は総理大臣と本気で考えていた
・彼の脳内に他者は居ない、自分自身の時価総額向上が自己目的化している
・青年になっても家族や友人関係が希薄で、底知れないルサンチマンを抱えた者がカネを握ったことで、それまでのディスコミニュケーションの仇を取るかのように自分語りを始めた


何らかのルサンチマンを晴らしたくて、周囲からの高評価に飢えている人をちょくちょく見かけます.そういう人は、周囲からの高評価(地位など)によってルサンチマンが晴れると根本的に誤解しているんですが、政治家や高級官僚みたいにバトル三昧人生に身を投じるならばそれも良いでしょうよ.でもね、平民人生を選んだくせに言葉の端々から「高評価飢え」が漂う奴にはかな~りムカつきます.

若い頃のホリエモンには、インターネット技術者という大人しい平民人生の道も在ったわけです.でもそれには飽きてマザーズ上場を目指しました.彼が技術者人生を捨てたのは、性急に結論へたどり着きたがる性格ゆえではなかったか? すなわち、インターネットビジネス勃興期に様々なアイデアが浮かぶものの実現を阻む旧体制は分厚く存在し、技術志向を捨てて権力志向にチェンジしなくては旧体制を挫く事は出来ないという信念に到達した.ホリエモンにとってそれは必然だったのでしょう.

ヒラサカ自身の事を語ってみる.ソニーでテープストレージの設計をやっていたわたしでしたが、上位層はテープビジネスを潰したくて仕方ない奴等ばかりでした.そうなるともう技術マターではなく社内政治マターです.技術者風情にどうこうできる裁量は少なかった.それに気づいてもわたしは技術者を捨てませんでしたが...

だから、ホリエモンが限界突破のため権力志向にチェンジしたのはひら的にはよ~く理解できるんです.技術者上がりのジェネラリストは多かれ少なかれホリエモンと同じ成長ルートを辿った人々です.そういう人はたくさん居ます.

ただし、フジサンケイに勝利→次は総理大臣というホリエモンの発想は、いくらなんでも妄想が肥大化しすぎでしょう.第一あれのどこがフジサンケイに勝ったと云えるのでしょうか? せいぜいカツアゲに成功したぐらいです.ライブドア社内でも、総選挙出馬の頃のホリエモンは経営者すら解脱してしまって、経営の実権は宮内に移っていた模様ですし.

ライブドア時代に稼いだ個人資産を抱えたまま刑期を終えたホリエモンは今、男の娘と遊んでいるところを写真週刊誌に撮られたりしているけど、M&Aだの新ビジネスだのというニュースはもう聞きません.インターネットビジネス勃興期に、噛み付いて破壊するべき対象がたくさん在った時期にしか通用しなかったキャラクターだったように思います.

最後に、ホリエモンが井上トシユキに語った言葉、
「孫さんが20年かけて築いた事業規模を5年で完成させる、サイト事業もあと半年でyahooを抜く」
止まりませんなぁ.

かしこ

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