2016年11月16日水曜日

【痴呆】 親父が失踪した (1)

軽くボケている親父が失踪した。

母親からの電話がかかってきた16時、わたしは秋葉原にいた。予定ではその後新橋へ移動しジン&トニックで喉を潤してから、とある講演会を見学するつもりだった。

母からの電話によると、伊勢原のイトーヨーカドーの5階で二人揃って店内を歩いていながら、親父が保護者(わたしの母)の後方をトレースできず、失踪してしまったのだ。正午ごろのこと。使えないのでケータイは持たせていない。

店内に案内放送をしてもらったが、もとよりそんな放送を聴取して出頭するほどの知能は失われている。交番やコンビニにヘルプを求める知能も恐らく失われている。そのくせ家の近所の散歩は毎日欠かさないくらい足腰は元気ときた。

母が店内各所を捜索したが見つからず、失踪から2時間後に警察に届けを出し、もしかしたら家に帰着しているかもしれないと期待したが不在で、わたしのところに緊急コールをかけたのが16時だったということだった。連絡が遅い。
伊勢原警察は、失踪してたかが2時間しか経っていないにも関わらず失踪届けを受理してくれ、店内の防犯カメラの精査などをしてくれたのと並行して、提出書類の準備のためわざわざ家を訪問してくれた。すごい親切である。

わたしは今日の予定をすべてチャラにして、一旦家に帰り、クルマで伊勢原へ向かうことにした。

地下鉄日比谷線の車中、中目黒駅に着いたときにぞっとする出来事があった。
降りようとしたら、対面の席に座っている女性が、銀座で働いている妹だったのである。なんという不吉な偶然。虫の知らせで来てみたの、なんつう縁起の悪い成り行きはどうか勘弁してもらいたい。
妹は、
「今日、風邪気味で早く帰ってきたの」
と暢気なことを言っている。
「お前、いま伊勢原の騒動しってるか?」
「ん?なに?」
どうやら母親は妹には連絡していなかったようだ。
「ひらパパが失踪した、伊勢原に連絡してみな。俺はすぐに伊勢原へ行く」

伊勢原に着き、母から失踪時の状況を聞いて駅周辺をクルマで流していた。20時ごろにわたしのケータイに警察から電話がかかってきて、失踪現場近くで状況を聞かせてくれた。目新しい情報は無かった。防犯ビデオに失踪人と思われる人物は映っていなかったらしい。それも不思議である。うまいことカメラの死角に潜んでいたのだろうか。

いま23時半。気温が下がってきた。TAXIに無銭乗車するか、コンビニで店員と喧嘩でもしてくれれば警察に通報が行くのだが、路頭に迷ってどこかでうずくまっているか、怪我をしてどこかでうずくまっているかのどちらかであると思われる。

酒を飲まずにスクランブルに備えているところだ。

いやな予感しかしない。


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