2015年9月30日水曜日

「心が叫びたがってるんだ」 2回目 長井龍雪のクサさを褒めちぎってみる

劇場アニメ 「心が叫びたがってるんだ」 2回目を観てきました.新宿のバルド9の21時の回は今日はガラ空きでした.

ネットの情報によると初動の興行収入は3億円を通過し、最終的に10億円に行くかどうかと期待されているようです.まぁ10億行けばそれなりに成功といえるのかもですが、作品の出来の良さからするともっと行って欲しいと思ふ.少なくとも「時をかける少女」以外の細田守作品よりも全然良い出来だとは言える.しかしなにぶん長井龍雪の知名度はまだまだ一般人には流布されていないので、「ここ叫ぶ」が金曜ロードショーで放映されて一般ピープルの認知度が高まると良いのだが、エンドテロップによるとフジテレビが金を出しているので日テレで放映される可能性は無さそう.

1回目よりも2回目の方が感動のボルテージが高かったです.リピート視聴の方が感動する作品というのはひら的には珍しい.

1回目では、クラスがミュージカルをやると決めるまでの前半部分をとても興味深く観て、後半のミュージカル部分は少しダレて、クライマックスの精神崩壊した成瀬順を坂上拓実がリアルに引き戻す部分で唖然とし、、、ラストシーンでかなり引いて見終えました.

2回目では、ミュージカルシーンを楽しめました.精神崩壊成瀬を坂上がリアルに引き戻すところは、画面から飛んでくる情報量が過多なため、坂上の猛獣使い属性がどうだったのかを2回目でも見切れていません.やはり3度目を観ないとダメかな.早くBD出ろwww  ラストシーンはかなり引きました.

1回目でも2回目でもラストシーンで引いたところとは、
 ・仁藤菜月と坂上拓実が倦怠期を越えた夫婦みたいな関係になってるってどうなの?
 ・田崎大樹が成瀬順に発情するって、田崎の人間的成長はその程度だったのか?

仁藤と坂上の倦怠感についてはまぁよいとして、田崎には問題があると思われます.成瀬は、不意に現れたピアノ弾きの優男を王子様と勘違いしてしまうような男性免疫不全な少女なわけで、その王子様ポジションに性欲の塊みたいな田崎が座る場面なんかキモくて想像したくないぞよ.ジタバタさが過剰な田崎は、今回のミュージカルを通じて押し時と引き時をわきまえた大人に成長したと描かれていた.けれどあの成瀬に田崎が告るというコトは、相変わらず田崎クンは押しの強さだけでジタバタし続ける男でしかないと思われ、それまでの演出意図に反するラストだったようで残念に思ってしまいました.

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長井龍雪の演習はやはりどこまでもクサイ.(良い意味で)

主要登場人物4名は、失語症の女子、自己評価の低い優男、優等生の女子、やさぐれた高校球児.優男と優等生は元カップル、優等生はまだ優男が好き、球児は優等生が好き、、、、設定でここまで状況を固めてしまうと、設定がネバつき過ぎて並レベルの演出家だとストーリー展開できないんじゃねって心配になってしまう.
たとえば「涼宮ハルヒ」では登場人物の恋愛感情的側面は無くはないが原則的に全員がフリー状態に設定されていて、場面によって押したり引いたりできる自由度があり、ある場面では情報統合思念体の端末に感情移入できるストーリー展開だったり、またある場面では時をかける少女に感情移入できるストーリーだったりと、自由度を持たせた設定ゆえに群像劇が成立するようになっている.つまり「登場人物に強い恋愛属性を設定しない」コトが群像劇を楽に展開する必要条件だと思うわけ.
逆パターンの「未来少年コナン」ではコナンとラナの恋愛感情は最初から確定事項です.ゆえにコナンとラナの恋愛は1クールで早々に決着してしまって二人はハイハーバーで夫婦みたくなってしまいました.それで宮崎駿は2クール目で何を起こしたかというと、ダイスとモンスリーという想定外のカップル成立させました.そうすることで群像劇要素を少し追加しました.
ところが長井龍雪の演出は、初期設定されている恋愛ベクトルを一旦バラして、物語中でどうにでも転べるフリー状態を作り、最後に思うがままに恋愛ベクトルを組み換える.それは他の演出家には追随できない長井独自の特技だと云えまいか.
そういったフリー化や組み換えを起こさせるためのツールとして、キャラ各位の贖罪意識や自意識や反抗心や人的成長の発露を全面的に活用するのが長井龍雪演出の特徴でもある.
だから、長井龍雪の演出はいつも泣いたり喚いたりと、とてもクサイ.
だが決してウザくはない.キャラが泣いたり喚いたりする理由に納得できるから.

1回目に観たときに、クラスがミュージカルをやると決めるまでの前半部分がとても興味深かったのはなぜかというと、失語症のはずの成瀬順が少しずつ叫びたくなってゆき、いろいろな関係者が起こす諍いを成瀬の「叫び」がことごとく鎮めてしまうという演出だったから.云うまでも無く本作は成瀬が言葉を取り戻す物語であって、その成瀬の数少ない言葉が魔法のごとくに周囲に影響し、キャラ各位にとっての諍いの動機が成瀬の叫びで雲散してしまう.その一連の演出は見事だった.

なので、本作は前半が全般的に優れていて、後半は精神崩壊成瀬を坂上がリアルに引き戻すところがピーキーに優れているように思う.

#今回は、2年2組の寄せ書きをもらいました.
クサさよしっ、、、


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