2015年9月21日月曜日

アニメ 「心が叫びたがってるんだ」---私の望むもの---

初日を観る気までは無かったのですが、2015年のアニメシーンの不毛状態からか、渇きを癒したく、居ても立っても居られなくなって「心が叫びたがっているんだ」の初日を観に行きました.

よかった、よかった.たくさん動員されることを望む.

振り返ると2015年のアニメランキングを現状このように考えております.
 1位 fate stay night UBW
 2位 心が叫びたがっているんだ
 3位 ---
 4位 冴えない彼女の育てかた
 5位 がっこうぐらし!
 6位 パンチライン
 6位 Charlotte
 6位 ユリ熊嵐
さすがに「fate UBW」の座をも「心が叫び」が脅かしたとまでは言えまいが、それでも、3位以下を寄せつけず、「心が叫び」が2位ではなかろうかと思ふ.

舞台はいつもの秩父辺りと思われる公立高校.
ヒロインは成瀬順.父の浮気現場を無邪気にもペラペラと喋ってしまったのかキッカケで家庭が崩壊した幼少期のトラウマで喋れなくなってしまった.
彼女が地域交流イベントのミュージカルの主役を演ずることを通してトラウマを克服し、喋れるようになり、閉じていた社会性を回復するというのがストーリーの主なところ.

ネタバレについてはこれ以上語りません.もっとも本作には知ってはイケナイどんでん返しがあるわけではなく、郊外の高校生の生活が地味に描かれます.とりわけ冒頭20分ぐらいまでの、まだドラマが回転し始める前のダル~い高校生の描写はよかった.BGMがほとんど使われませんでした.

金曜ロードショーで繰り返し放映されるような老齢のアニメ演出家の名前を何人か挙げるコトができますが、そこまで有名ではない若手アニメ演出家達の中でいうと、本作品の監督の長井龍雪がナンバー1だろうとひら的には思っています.(イシグロキョウヘイには驚かされたがw)   TVアニメを観ていて、なんか今回はスゴかったな、と思ってEDテロップを見ていると長井龍雪演出回だったりする.

観るのはアニメばかりですが、わたしが映像作品を観る動機は、とあるカタルシスを得たいがためなんです.典型的なのが「言の葉の庭」、全般的に極めて静かに進行するストーリーだったが、ラストでタカオの感情が爆発して「あんたが嫌いだったさ」で物語が突然クライマックスに達するあの感じ.そしてそこに至るまでの長い道のりを監督が計算しつくして作ってあるなと感じられたとき、その映像作品を観たカタルシスでわたしの脳内には大量の快楽物質が分泌されるという生理になっているのです.
リュック・ベッソン監督の「レオン」も同類で、最後に手榴弾を「present for you」でドカーンとなって終わる.それまでの一切の描写はその瞬間のためだけにある.

長井龍雪の演出の際立って優秀なところは、地味な設定の地味なストーリーではあれど、登場人物同士の相克が高まって衝突して泣いたり喚いたり手がつけられなくなって、しかしそれを克服した先に物語のステージが一歩進展するところだと思う.弁証法的というか.

「心が叫び」でもそういう描写が繰り返し出現してひら的にはひたすらご満悦というわけなのです.誰もやる気のない地域交流イベントだから、面倒なミュージカルなんかご免だわっていうクラスの総意が、軽い喧嘩を通じてミュージカル賛成に転ぶところなんかやはり長井演出ならではの見事さだと思う.
構造化された戦闘シーンをデザインするのはとても難しいと思う.けれど、物語のステージを進展させる構造化された諍いをデザインするのはそれよりもっと難しいのではないか?  それをいつもサラリとやってのける長井龍雪って一体どうなってるんだ?というのが、長井龍雪に惚れている理由だ.

ヒロインの成瀬順と主人公の坂上拓実が争うのがクライマックス.あの場をどうやって収めるんだ?と思って観ていたが、納得できちゃいました.

ゆえに長井龍雪になら、精神汚染で逃亡したアスカにシンジをけしかけて、弁証法的にアスカを現実に引き戻すことが出来たはず.わたしにはそんな手法は思いつかないけど、長井龍雪ならどうにかすると信じられる.

 「心が叫びたがってるんだ」は私の望むものでありました.

#劇場でミュージカルパンフを配っていました観た人にはわかるものなんです.



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かしこ


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