2015年7月5日日曜日

新型光ストレージへの妄想  その7 (夢みたいな光ホログラムDISK)

連載第7回目は本題であるストレージの話でございます.

こちらのニュースによると、6TBのHDDを東芝が発表と書かれています.
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20150630_709451.html

このニュースを読んでHDDの大容量化はどんどん進展しているぞ!と思ったらちょっち違っているんです.このニュース写真のヘッドを拡大すると6ヘッド構成ですから、なんのことはない、DISKを3枚積んで6TBにしているだけです.DISK1枚当たりは2TBって計算です.DISK3枚なのでお値段もそれなりだと思います.

こちらのサイトの価格調査によると、いま、秋葉で2TBのHDDが平均価格¥8000で安値価格帯モデルのようです.これはすなわちDISK1枚で2TBが実現できているという状況だと推測されます.

同サイトのバックナンバーを読むと、2010年の時点でこんな価格で売られていました.
 1TB   ¥6000        安値価格帯モデル
 2TB   ¥10000
2010年当時の1TBモデルが、たぶんDISK1枚で実現されていたのだと推測されます.

つまり、2010年から2015年まで5年もかかって、DISK1枚当たりの記憶容量が1TB→2TBへとたったの2倍にしか進歩していないという状況だと考えられます.DISK1枚当たり記憶容量が毎年倍増していた時代は1TBに達した時点で終わりを告げました.将来のHDDがDISK1枚当たり10TBを記録できるようなブレークスルーは無理だとわたしは予想しています.実験室レベルでは出来ても製品化は難しかろう.

3.5inch DISKの片面に1TBが記録されているわけですから、記録密度は次のように計算されます.
・3.5inch DISK片面の面積はおおよそ8平方インチ
・そこに1TB=8Tbitが記録されているわけだから、1平方インチあたり1Tbit 記録されている
・換算すると、1平方ミクロンに1550bit も記録されている    スゲー

DISK表面の微小磁石で情報bitを記録するのはそろそろ限界だと思います.

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一方で光ディスクはというと、BDの記憶容量が最大で、DISK一層あたり25GBなのは皆さんご存知のとおり.開発者ががんばって50GB近くまで行けるかもしれませんが、そういうformatをどこの電機メーカーも出さないと思います.たかが50GB程度の光DISKなんかにもう需要が無いから.だってクラウドにストアすりゃいいじゃん.2017年には128GB FLASHを最安値¥1000で買えるかもしれない.
そういうマーケティング要素はさておくとしても、青い光の波長が0.5umぐらいですから、大雑把に言って1bit記録するのに0.5umぐらいのサイズの光点が照射されるわけで、筆として使うには光は太すぎて困ってしまうというのが光DISKがブチ当たった壁です.HDDが1平方ミクロンに1550bitも記録できているのに比べると、光DISKの後進性が伺えます.

ここで、光DISKは光のON/OFFで情報を記録しているので、こんな風な一種のAM変調であると考えても良さそうです. (これほどの高速スイッチングはしてませんが)
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AM変調という言葉が出たところで、前回書いたPM変調で光DISKに記録できないのだろうか?

それが、実験室だけの限定ですが「光ホログラムDISK」というのが既にあるんです.飽くまでも理論上の可能性だと思われますが、こちらのページなんか、DISK1枚で500TBなんていう景気の良い数字が書かれています.すばらしいじゃないか? HDDを遥かに越えるぜ!   http://optpia.ist.hokudai.ac.jp/hds/

「ホログラム」というと、クレジットカードに貼られているこんなマークがホログラムの一種です.立体的に見えるといわれればそう見えるが、解像度をもっと高く出来ないのかよ?って見る度にいつも思います.

ホログラムを記録するメディアは銀塩写真のフィルムと思えばあながち間違いではないだろう.
↓ホログラムを記録する原理は、この図がわかりやすいと思う.記録材料というのが写真フィルム.光源はレーザー.ビームスプリッタで2又に分けたレーザを、片方は物体に照射し、片方はそのままスルーさせ、写真フィルム上で2ビームを結像させると何が起きるか? 写真フィルム上に光の干渉が生じます.写真フィルムがその干渉縞を感光すれば撮影完了というわけ.
撮影時に使ったレーザーをもう一度使って、現像した写真フィルムに照射し、撮影時の逆干渉させれば物体像を鑑賞できる.ホログラムが光の干渉を撮影するということは、光の波の位相情報を記録したり再生したりするのと同じコトなので、光のPM変調と呼んでもいいだろう.

このようにホログラムの原理は簡単なので昔からある技術.
それを光DISKに応用するならば、
・光DISKに感光剤を塗る
・レーザーを飛ばして干渉させる (記録)
・レーザーを飛ばして逆干渉させる  (再生)
・ただし照射するのは2次元のビットパターン.LCDで作る.

この2次元ビットパターンを記録できるところがホログラムの良いところで、HDDやBDのような「一筆書き」ではなく、多数bitを一気に書くから、転送レートを高める余地がある.

また、既存の光DISKで用いられている光のON/OFFという粗雑で非効率な記録ではなく、光の波の位相という微妙で高効率な記録がホログラムなので、既存の光DISKに比べて記録密度を飛躍的に高める余地がある.前回説明した64QAMなんか使えたら大変よろしいでしょうな.そういうおいしいところを考慮するとDISK1枚で500TBなどというソロバン勘定になるのでしょう.

今回は、「光ホログラムDISK」はすばらしい!と持ち上げておきます.

しかし次回は、奈落の底に叩き落します.

エイメン

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6 件のコメント:

  1. 記録する光線は3次元(厚さ方向)も含めて干渉縞が記録され、再生されるのですね。

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    1. 干渉縞はフィルムの表層だけでなくて深さ方向に記録されるみたいです.

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    2. 疑問が 液晶を通してもコーヒレンスが失われないか、光束スポットの移動につれて像は流れるのか、区切って送るのか、
      データが画像であるなら記録再生速度は液晶の記録やPDの受光速度がボトルネックにならないかです。

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    3. DISK回転に伴って、像は流れます.カメラが手振れしているような状態です.なので、DISKはあまり良くないかも.半導体のステッパーみたいなのが理想かもです.
      コヒーレンスはいろいろと難しいはずです.

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  2. ソニーOB:佐藤2015年7月8日 21:22

    「東芝が、「3次元磁気記録」を実証しました。マイクロ波と記録媒体の多層化によってハードディスクの記録容量を増やす方法です。この3次元磁気記録によって、記録密度10Tビット/平方インチを目指します。この値は、現在のハードディスク製品の約10倍。この技術、ハードディスクだけでなく、磁気メモリーや磁気テープへの応用も可能だそうです。」だそうです。

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    1. 7月8日の発表のようですね、タイムリー.
      スペーシングロスがぁぁぁ、、、、、、というネガティブ発言は控えておこうそうしようwww
      上層ほど性能劣化するのは蒸着メディアで体験済みな気がしていますが、そういうネガティブ発言は控えておこうそうしようwww

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