2014年1月12日日曜日

押井守の映画へのスタンス論「勝つために戦え!」より

既報のとおり、押井守が「パトレイバー」の実写版を作るそうです.(先日書いた記事)

楽しみに待っておりますが、押井守の気になる発言を見つけまして、以下に転記します.

押井:  ボクはアニメーションは絶対に成功する、表現としてはね.客が入ったかどうかは別だよ.アニメーションは日本では必然的に大作になるから、だからボクは絶対に失敗しない.
しかも自分の本領だから.練りに練って、演習を繰り返して、絶対に失敗しないようにしてるんだもん.実際、作品的には失敗したこと一回もない、と思ってるよ.
実写はいいんだよ.っていいわけないんだけど(笑)、ボクにとって実写はいろいろとやりたいことをやる世界.だから内実は違うけども、リドリー・スコットと同じような、ズンチャッチャという三拍子の世界で仕事することに決めたんだよ.ボクが宮さん(宮崎駿)みたいにアニメの映画しかやらない監督だったら、毎回成功を宿命づけられちゃうんだよ.これは監督にしてみたら自殺行為.宮さんはそれをやってるからたいしたもんだけどさ、でもボクの目から見れば「ナウシカ」から「ポニョ」にいたるまで、映画としてはすべて破綻してるからね.表現としては成立しているかもしれないけど.

押井守が言ってる事はつまり、
「実写制作は3回に1回しか真面目に作らない.3回に2回は実験として軽く作る」
ということです.果たして、パトレイバー実写版は、真面目な1回なのか、実験の2回なのか?

押井守監督の実写映画って意外にたくさんあるんです.
『紅い眼鏡/The Red Spectacles』『ケルベロス-地獄の番犬』『トーキング・ヘッド』『アヴァロン』『KILLERS キラーズ』『真・女立喰師列伝』『斬〜KILL〜』『ASSAULT GIRLS』『28 1/2 妄想の巨人』
どれもあまり面白くなさそうで「アヴァロン」しか見てないんだけど、たぶん真面目に作ったであろう「アヴァロン」ですら映像実験要素満載な玄人向け映画であって、一般人が面白かったとか観て良かったとか思える映画ではありませんでした.

さて、「パトレイバー」実写版がどうなるか?ですが、過去の事例を踏襲するならば、たとえ押井守が真面目に作ったとしても、玄人向け過ぎてつまらない映画になると予想されます.わたしは押井守がつまらない映画しか撮れない男だと言っているわけじゃないんです.押井守がチャラい映画を撮る気になるかどうか?という点で疑念ありと言っているんです.

果たして押井守は「パトレイバー」実写版をどうするつもりだろうか?

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上の発言はこの本から引用しました.「勝つために戦え!」というタイトルです.この本は、押井守が古今東西の映画監督を仕分けする(評論する、斬りまくる)という内容で、わたしとしてはとても面白く、たまに読みだすと止まらなくなってしまいます.この本の仕分けの視点はこうです.映画監督として一生映画を撮り続けるには、映画業界内で何らかのポジションを獲得するのが必要条件である.しかしポジションに安住して表現者として堕落してしまっては元も子もない.その狭間でサバイバルするためにどう戦うか?
映画評論のスタイルってのはいろいろあると思いますが、押井守の映画評論って、映画監督の人格を評論している風に見えます.それはつまりこんな文脈です.
  ・この監督は、ほにゃららをやりたくてこの映画を作った、それは素晴らしいことだ
  ・この監督は、もうやりたい事がなくて映画を作っているからダメだ
  ・この監督がやりたい事はこれこれだが、いまさらそれをやっても仕方ないからダメだ
  ・この監督は昔はよかったけど、今はダメになった
それでもってあのシーンが良かったとかにはほとんど触れない.

この人格評論スタイルは、わたしの考え方と似ているんです.わたしも、人格に遡って評価するのが好きなんです.例えばソニーに勤めていた頃、人事評価をする時とか、他部署の悪口をしゃべっている時に、「ヒラサカは業務成果と人格問題を混同している」と文句を言われたことがありました.でもさ、ソニー社員はマクドナルドのアルバイトじゃなくて、もっと高度な仕事をしているわけです.知的に高度だったり、高度な胆力が要請されたり、”高度さ”はいろいろですが.その”高度さ”を実践している人と出来ない人の差違っていうのは結局人格に帰すると思うんです.嘘つきはダメとか、弱気な奴はダメとか、逃げ腰な奴はダメとか.だからわたしは人格評価を正々堂々とやってましたわ.

なので、この「勝つために戦え!」は似た者同士的にとても面白い.

別のところで押井守が宮崎駿の「風立ちぬ」を褒めていました.抜粋すると、
「もはや開き直ったとしか、考えられません.誤解のないように言っておきますが、これは大変に結構なことです.『子供たちのために作る』などという大義名分・建前を離れ、自らの欲望の赴くまま、リピドーに導かれて描くことは映画の基本です.映画とはつまり、欲望の形式なのですから」
うははは、これって、わたしの「風立ちぬ」に対する評価と同じじゃん.嬉しいことだ.

#サラリーマンを辞めてからのわたしは、「勝つために戦う」ことを中止しました.外で戦ってなんかいる暇がないからですが.ま、それも一種の戦いなのかもしれぬ、、、、

かしこ


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17 件のコメント:

  1. んー、アヴァロンは雰囲気が好きなんですけどね。

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    1. えーっあれ観たんですか.意外です.好きなのはVR世界ですか?それともREAL世界ですか?

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    2. アヴァロンについて考える、、、

      住み心地の良いVRに行きっぱなしになる者をREALに引き戻すというストーリー.これって攻殻かマトリックスの派生みたいでオリジナリティが少ないと思ったのがアヴァロンってどうなの?と思った理由の一つ目.モチーフは似ていたとしてもひねりがあればいんだけど、ひねってなかったし.

      最後に撃ち合いになる.彼は撃つ気がなくて、彼女に撃ち殺されたがっていた.死に際の彼の手から銃弾がコロコロと転がり落ちる.この重要なシーンが、鬼のようにダサかった.まるで韓流ドラマの画面のようなダサさに驚いた.こんなんでいいの?と.それがアヴァロンってどうなの?と思った理由の二つ目.

      アヴァロンに入って、さーっと画面の彩度が高まるシーンは良かった.

      だだ、もしもアヴァロンをアニメで作ったら、そんなにダサく感じなく作れたと直感的に思う.どうしてそう思うのかを定義できてないけど、今でもしばしば考える事なのです.イデオン発動編のオーバーな芝居なんて、アニメだから観れるんじゃないかと.そのへんがキーワードのように思う.

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  2. このコメントは投稿者によって削除されました。

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  3. 見たのは劇場ではなくて、BSだかCSでやっていたのを途中からたまたま観たのでした。

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  4. 好きなのはReal世界の方ですね。出ているのは外人さんばっかりなのに、通常の外国映画とは違う雰囲気で、それが面白かったというか。まあ、ラスト際の撃ち合いシーンはたしかに過剰だったかとも思いますが、そういうのが好きな人もいるのでしょう。あと、全般的に音響はよかったような記憶があります。中古でBD売っていたので、さきほど買いました。( ´△`)

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    1. VRは白黒に近い彩度の低さが特徴的だと思いました.

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  5. パトレイバーは、その後TVシリーズも実写で始まるようです。
    TVでもやるという事は、チョットは期待できそうですが、押井守氏の小説版の評価を見るとダメかもしれません。
    ボランティアのエキストラに応募したので、参加案件が色々来ましたが、殆どの日程が平日朝からなので、一度もエキストラとして参加できませんでした。中には、平日昼間の撮影で、高校生又は高校生に見える方、制服着用で参加お願いします。などの無理な案件もありました。
    撮影場所は、熱海が多かったようです。

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    1. え、そんな募集が.4/5公開ですと撮影はもう終わってるのでしょうか?

      そしてTVシリーズが???
      「相棒」のように長寿番組になるといいと思います.(無理)
      年末「パトレイバースペシャル」が放送されるといいと思います.(無理)

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  6. つい最近まで、鶴見の埠頭に1/1のレイバーがあったそうです。
    ただ、撮影はTVシリーズ含め、全て終了しました。
    しかし、終了の告知後に2回ほど追加撮影があったと記憶しております。
    刑事(台詞無し)役もエキストラを募集していたので、この辺りがドラマ制作会社が作るのと押井氏が作るのとで、雰囲気が(悪い意味で)変わってくるのでは無いでしょうか?

    一般的な刑事ドラマの場合は、死体を発見するだけのヒトも、キチンと役者を投入しているようですから・・・

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    1. 鶴見で撮影ですか.あの辺りはドラマのロケ地としてはメジャーなのかしら?

      TVも撮影完了とは早いですねえ.やっぱアニメ制作と違うわ.すでに撮影完了で、上映が最後の方は1年後なので、投資→回収までがすげー時間かかってつらそうなビジネスだとか思ってしまいました.

      ところで薄井殿的には実写版パトレイバーへの期待感はいかがでしょうか?
      ひら的にはチャラくというか、サービス精神で作るのではないかと予想してるんですが.

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    2. とりあえず匿名2014年1月14日 20:35

      実写版パトレイバーどころか、押井氏の作品にあまり期待しておりません。
      たしかに押井氏は素晴らしい作品が多数あり、攻殻機動隊やうる星やつら2あたりは、主人公の内面をテーマにしていて興味のある分野です。
      しかし押井版パトレイバーはテロと立ち食いソバがメインのテーマになってしまい、楽しめませんでした。
      当時色々な雑誌で、ゆうきまさみ氏や火浦功氏あたりが『警察が2足歩行の巨大ロボットを使ったら?』という企画を小ネタにしていた頃は『ガルディーン』も読んでいたので、楽しみにしていたのですが、いざ始まると主人公の泉野明が(貧乳の為)興味を失せてしまいました。どう考えてもガルディーンの主人公コロナのロンパリ気味の巨乳のほうが魅力的です。こちらの方は是非実写で見てみたいものです。
      実は、ゆうきまさみ版パトレイバーも、当時少年サンデーで購読してていたのですが、安永航一郎版の巨乳ハンターVSバストレイバーを笑って読んでいました。
      結局、パトレイバーオタに成り損ねて巨乳フェチになって今日に至るのですが、妻がボランティアエキストラのサイトを見つけてきたもので、何かの記念になるか?と申し込んだのですが、結局参加できず終わりました。

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    3. 実は「パトレイバー2theMovie」が好きなわたしは、その他のパトレイバーにはそれほど惚れてはいないんです.
      巨乳フェチとなると「フリージング」はお奨めかと、、、いや既にご存知かと、、、

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  7. ソニーOB:佐藤2014年1月13日 17:56

    最初は2chラーのコラだと思っていたが本当のようですね、表参道に置いていたフジテレビの謹賀新年看板。もう意図がわからないというかやはりおかしくなっているんでしょうね。
    とてもおどろおどろしいです。

    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140113-00000003-tospoweb-ent

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    1. ブキミとしか言えませんで、ご乱心もほどほどにあそばせ > フジTV殿

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  8. 某所で萌えキャラと平坂さんの絵を見たのですが、使われるのはいつくらいなんでしょ?

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    1. ビジネスの早期立ち上げに死力を尽くす所存であります

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