2012年11月9日金曜日

円高で電機メーカーはどういう風に死ぬか?

一昨日、某電機メーカーの人と飲みまして、ご多分に漏れずリストラ真っ盛りなわけでしたが、潔く事業をたたむその潔さにビビリました.何も残す気ないのか? みたいな勢いなもんで.....

このブログでわたしは、電機メーカーの業績悪化の原因は円高に尽きる、と何度も語ってきました.テレビへの過大な投資の失敗とか、逆に投資がチョロいからサムソンに負けるんだとか、企業ごとの事情は様々挙げられるとは思いますが、過大な投資したって円安なら稼働率が高まって投資回収できますし、そうやって投資が廻ってりゃ次の投資もできるわけで、結局なんでもかんでも円高が死亡フラグと思ってだいたい合ってます

ソニーの場合、Appleに負けてんなよというお叱りはあろうことと思いますけど、でもたとえwalkmanが死んでもソニーが傾くなんてことは本来ありえない話です.ソニーの業績悪化原因はAppleなんかじゃなくて、原因の80%は円高です.逆に円安になればいきなり史上最高利益、なんてことになるでしょう.

ドル円の為替相場と、電機メーカーの生き様の相関は、だいたいこんなイメージかと思います.
¥110
日本人が企画し、日本人が開発し、日本人が設計し、半分は日本人が生産し、半分は中国人が生産し、日本人が利益を得る

¥95
日本人が企画し、日本人が開発し、日本人が設計し、中国人が生産し、日本人が利益を得る

¥80
日本人が企画し、外国人が開発し、外国人が設計し、外国人が生産し、外国人が利益を得る

だから、¥80のドル円レートが何年も続くと、電機メーカーは死にます.死ぬって言っても、ソニーやパナのブランドが消滅するわけではありません.企業の形が変わってしまって、不可逆に緩慢に死んでゆくということです.

どういう風に死ぬか?  (緩慢版)
日本人が企画だけしかしなくなって、開発・設計を外人がやるようになると、もはや特許申請ができなくなります.これは当然です.企画屋は特許を思いつかないですから.製造面では、製造技術が社内からなくなるので製造コストを下げる能力が減退してゆきます.品質面では、どういう品質の製品を作ればいいのかを考える能力が減退してゆきます.
こうして、10年ぐらいかけて、不可逆に、ブランド管理しかできない企業に変貌してゆきます.それでもソニーやパナという名前は残りますが、そうなってヘッドクォーターしか残ってないソニーやパナのことは死に体と見なして良いでしょう.

どういう風に死ぬか?  (即死版)
いまシャープは円高で価格競争力が弱すぎるので設備稼働率が高まらず大出血が止まりません.半導体メーカーも設備屋ですから事情は同じでしょう.シャープにせよ、ルネサスにせよ、JAL方式か銀行団の奉加帳方式か知らないですが何らかの救済手段によって2012年を乗り切れたとしても、円ドルレートが¥80であるかぎり全く企業復活の役には立ちません.2013年も大出血が止まらないでしょう.シャープやルネサスの場合は緩慢な死じゃなくてサドンデスかもしれません...

悪いのは企業じゃない
リストラして徐々にブランド管理会社になってしまう企業はバカなのか? そんなことはないです.だって、現下の交易条件からしたらそれが合理的な行動なんですから.うれしくはないでしょうけど、やむを得ないといったところでしょう.企業を責めるのは間違いです.

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今日、これは良いと思うグラフを入手しました.↓   (画像クリックで拡大表示されると思います)
青い線が円の本当の実力で、赤が為替レートと思えばいいでしょう.青に較べて赤が上離れするほど、円が過大評価されていて(=円高)、電機メーカーの業績を悪化させます.
思えば、わたしがソニーに勤めていた頃、世知辛くなってきたのは2003年ごろなんだよなぁ.このグラフと符合していて怖いくらいです.とくに2008年以降赤がグワワッと上昇しています.リーマンショックの影響でしょう.
リーマンショックの影響を如実に表すグラフもネットで見つけました.↓
これは各国の通貨供給量(だと思う)のグラフです.
中国なんか「オマエそりゃまずくね?」と言いたくなるほど札を刷りまくってます.これじゃインフレになるわけだわ.
●USA・EU・UK・韓国も札を刷りまくってどこも2~4倍に増やしてます.こんなに札を刷って、お前らが為替操作してるのがバレバレじゃねぇかと言いたくなるのはわたしだけでしょうか???
●それで青い線の日本ですが、あきれるくらい横ばい.彼我の差がこれだけあれば円高になるわけだわ.ちなみに2003~2006に少しばかり上ブレしているのは小泉政権の金融緩和かと思います.
う~ん、こんなことされてたら、電機メーカー総崩れなんてあたりまえじゃん.この交易条件の劣悪さったら民間企業の努力の限度を超えてるぞ.
クイアラタメヨ   >  日銀殿、政府殿

かしこ


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7 件のコメント:

  1. お早うございます。
    米、中国の指導者の再選、交代が有り、どう世界は動いて行くのか
    注視して行く必要が有りますね、注視しているだけでは無く、何を
    成すべきか考え、実施して行く事が国、日銀は、必要ですね。
    日銀と政府が経済市況について会合を持ち、市況が弱含みとの
    一致を見たのは良い事かもしれませんが、世界経済も見る事も
    大切ですが、日本経済の実況実情をもっと深く見る事が必要と
    思われて成りません。
    綺麗なグラフが有り、大変理解し易いです。今までは、新聞も
    あまり読んでいませんでした。今日は、土曜日、暇が有り、
    もう一度、勉強させて頂きます。

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  2. 企業は、自助努力により収益改善はできるのだろうか?-->NO?

    企業が衰退すれば、法人税、その他の減収に成り-->国の財政をより圧迫

    経済連の政府のへの働きは、正常なのか?

    TPP参加で目標が一致しているから良いと言うのかな?
    (まずは、製造業を強くすると言う考えか???)

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  3. TPP参加で日本の製造業は、回復し難関を乗り越えられるのでしょうか?

    円高では、対処は難しいと思いますが、

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    1. イヤ~暗澹たる思いしかないですね.

      ハイテク製品はもともと関税が安い同士なのでTPPによる影響はあまりないように思います.

      影響があるのは、防衛産業、放送産業、新聞、保健医療、などの日本的慣行とか規制で守られている産業だと思います.丸ごとUSAの商習慣で蹂躙されちゃうんじゃないでしょうか? 放送と新聞なんか潰れても良いけど、防衛と保健医療がUSAに蹂躙されるのはイヤですねぇ.

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  4. この頃政局が動いて来た感じを受けますが、話題のTPP参加問題で景気は良く成るか?
    電機業界は回復方向に向かえるのか、農業など一次産業、保険、金融関係などに影響が
    大と思われます。この点をどの様に読み、対策は、考えられるのでしょうか?
    総崩れに成るのか、成らないのか心配です。

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    1. なんだか解散総選挙が12月16日だと野田総理が言っててすごいことになってますね.今日のブログで感想を書きます.

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