2012年6月3日日曜日

マクロ経済が判らない人の頭の構造が判らない

当ブログを始めたころ、失業した理由シリーズというのを連載しました.わたしが電機メーカーに就職・転職・退職して失業者になるまでの変転を書いたシリーズです.第一回最終回

年齢が40歳以上の人が電機メーカーに就職した動機は、日本の製造業は世界最強だから電子工学とか物理を専攻して電機メーカーに勤めるのは自分の人生のロールプレイとして悪くない投資だと多かれ少なかれ考えたからでありましょう.もちろんわたしもそうでした.

そんなわたしが、製造業にしがみついていてもこりゃダメだなと考えを180度変えた理由は、日本の製造業の収益が世界最強じゃなくなってしまって世知辛くなってしまって旨味がなくなってしまったからです.製造業の収益がなぜ悪くなったのか? それは単純に円高のせいでそれ以外の理由は無い、というのがソニーに勤めていたころからの確信でした.

けれど、円安誘導するテクニックがなかったら、いくら原因が円高だとわかっても対処できません.通貨を安く誘導するには公定歩合を下げればよいわけですが、現在のようなデフレ環境では名目金利をゼロにしても実質金利が+2%とか残存しますので、円安に誘導する金融テクニックは無いんだということを喩えて「紐では押せない」などと世間では言います.為替介入なんか金をドブに捨ててるようなもんですし.なので円安誘導は事実上不可能なのだ、と長い間考えていたわたしでした.それでこんなブログの記事を書いたこともありました.

ところがその後、円安誘導するテクニックがあると知り金融緩和論者のシンポジウムに参加したりしました.そのテクとは公定歩合でもなく為替介入でもなく、日銀が1万円札を刷って市場に供給するというテクです.マネーサプライとかマネタリベースという用語に関係するテクだそうです.
マネーサプライで円安誘導ができる理由は、企業が増資して株式数を増やすと株安になるのと同じ原理で、1万円札をたくさん刷りゃ円安になるというカラクリです.知ってしまえばそりゃそうだよね~っていうカラクリです.アメリカのQE2はドル安を目的にやったわけじゃないが、金融危機を緩和するために大量のドルを刷ったので結果的にドル安になっちゃったわけです.

ここで表題の、マクロ経済が判らない人の頭の構造が判らないっていうのに話がつながります.

わたしはどこかで聞いた風なことを書いてるわけですが------実際どこかで読んだことの請け売りです------、わたしは経済学を勉強したことはないですし、上で書いたことには間違った認識を含んでいてかなり恥ずかしいことを書いてるのかもしれません.というかたぶんそうです.でも、増資して一株利益が希釈されたら株安になるのと同じく1万円札を大量発行すりゃ円安になるわなという素人的アナロジーぐらいはひとまず判る-------刷る1万円札の金額が数10兆円などと桁違いという差違はありますが--------.でもさ、そういうアナロジーすら頭が働かない人って実はうようよいるんだよね? 年寄りに顕著だとはいえるけど、年齢に依らず広く分布している気がします.

わたしよりも頭が良くて書物もたくさん読んでいるけれど、こと経済や相場や為替の話になると判らないという人に会う度に「この人が判らない理由がオレには判らない」と思うんです.資本主義で起きる現象は、ネズミ講の参加者が形成する相場の乱高下ですから、ああしたらこっちが損するからあっちが得してこっちの相場が下がるチクショーみたいなクソ話の集積体にすぎないわけで、素人的アナロジー理解ぐらいになら誰だってたどり着けるだろと思うんですが、それが判らない???なんで??? ------わたしタカビーですか?------

冒頭で書いた電機メーカー屍累々事態の原因は、ミクロには中国,韓国,サムソン, LG, FLASH, iPod, iTunes などいろいろ挙げられますけどそんなのは些末な事象で、円高というマクロ現象でトドメを刺して終わりです.だから円安にすればそれでOK.赤字か黒字かスレスレのソニーだって、為替が1ドル=¥110だったらポンッと史上最高益を叩き出せますぜ.

http://www.videonews.com/ って知ってますか? わたしは視聴契約してます.これの「民主党政権はどこで失敗したのか」というタイトルの番組に民主党の福山哲郎が出て喋っていました.福山氏としては民主党は失敗してませんヨと語りたいわけですが、彼の発言を聞いたひら的には無残としか思えませんでした.それは、マクロ経済的成果がないからです.福山氏曰く、子ども手当+高校無償化のような成果を出したんだと強調していましたけど、そういうミクロ政策をやらなくても景気浮揚で経済が回るようなマクロ政策が出来ればそれが理想なんじゃないかとわたしは思います.ところが民主党にはマクロ政策が不在なもんだから、ミクロなバラマキ政策の増長にしかなっておらず、結果的に高福祉には高負担が必要なのでデフレ下でありながら消費増税するというマクロ経済的に逆噴射な政策を採ってしまっているという見るも無惨な成りゆきです.マクロ経済が判らない政党はこういう無残な死に方をするのか~って感じさせるまことに寒い番組でした.「マクロ経済が判らない政党の頭の構造が判らない」

最後にドイツの話を.ドイツってマクロ経済的にすごいことをやろうとしているなぁと思います.ユーロ圏で唯一の金持ちはドイツですから、金融政策はドイツの意志で決まります.そのドイツがいまやろうとしていることは、こういうことです.
ユーロ各国に緊縮財政を要求する→ドイツ以外は全て沈没→ユーロ安圧力→ドイツの貿易黒字増大→ドイツからユーロ各国へ資金環流→ユーロ各国はドイツの言いなりになる→ドイツ第4帝国完成
すごいと思うなぁ.ユーロ各国に財政緊縮を要求するというたった一つのマクロ経済政策だけで、当分の間ドイツが経済的にユーロを支配できるという絶大な効果を得る「マクロ経済が判る国家はおいしくてうらやましい」

民主党もこのくらいすごーいマクロ経済政策が欲しかったですね.(無理無理www)

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8 件のコメント:

  1. 昔から知財保護、貿易不均衡問題、BIS規制、人権、為替、
    CO2規制、等々ありますが、「強い国」が「勝つ」ために
    使っているツールですよね。

    貿易不均衡問題とか言われていた時代は本当に腹を立てて
    いました。競争に勝ったことが悪いんかい。良い物を安く
    作って何が悪い。とか。

    それに比べると為替操作の方が、まだ手口として洗練されて
    る気がします。

    ドイツも一生懸命働いて、重税と福祉の切り下げに耐えな
    がら怠け者のギリシャ人に貢いでいるのですから、帝国の
    国民は我慢がいるなあ。と思います。

    おそらく、ヒトラーの時の様に国富をためこんだところで、
    残らず吐き出させられるのではないかと心配しています。

    日本人は、意思を持たず漂流することを選んでいるのでは
    ないですかね。代償は結構高くつきますが・・。

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  2. 最後の一文に同意.それは団塊の世代が死ねば変わるだろうし団塊の世代が死なないうちは変わらないだろう.

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  3. その世代の人達の問題は気が重いですね。
    ( ̄。 ̄;)

    返信削除
  4. その世代の人達の問題は気が重いですね。
    ( ̄。 ̄;)

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  5. 私は英数が苦手で頭がいいわけではないけれど、相場や為替など金の動きに関してひらさんのいう「理解できない人」にドンピシャです。なぜだろうか自分でも不思議なくらいわからないんです。私は電気屋なので電磁気と交流理論だけ理解すれば普通の仕事はいつもこの電磁気と交流理論に遡ればほとんど理解できるつもりです。(電波や波動はダメだけれど)相場や為替などなど経済現象は多重のフィードバックがかっかっていてどこをどうつつけばどうなるか、全くわかんないのです。経済の原理的なところがわかっていないからかなともおもうけれど、原理はひらさんお言うとおり単純とも思うんだけれど、、。複雑系っていうのかな、塩沢由典さんの講演きいたり読んだりすると、単純に考えては間違えるとも書いてあったりして、、、!!

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  6. ユーロの金融危機を救済する方向性は、1)ECBがドカドカ金融緩和してインフレで全員から金を巻き上げて借金をチャラにする方式と、2)いまドイツが主張しているように緊縮財政でドイツ以外の全員が貧乏生活する江戸時代風の方式、という逆方向の2通りあるようなのですが、後者だと工業製品の輸出で外貨を稼ぐ能力を一人だけ持つドイツが一人だけ有利なんだってことをまずは理解するのが判りやすいマクロの例題だと思いますが、いかがでしょうか? それ以前に通貨高で輸出製造業がどういうふうに死んで行くかをミクロな例で知るのが先かなぁ? う~ん、、、、

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  7. 私のことを見透かしているように、先ほどアマゾンからあなたにお薦めする本として超マクロ経済入門っていう本の宣伝メールが届きました!!

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  8. 自分の検索履歴が意外なところにバナー広告として表示されるのは不気味です.

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