2012年1月9日月曜日

ソニーの次期社長の下馬評----全盛期に始まった過ち----

ソニーの次期社長が平井氏だという報道がありますね.いままで下馬評が当たったことってあったっけ?と思うわたしですが、下馬評通りになっちゃうのかな?

あまたあるハイテク企業の中でソニーだけは独特の立ち位置にある企業でした.それは新しい体験を提案してばかりいる企業という立ち位置でした.ですがいまや新しい体験を提案する企業としてはAppleに大きく水をあけられた感のあるソニーです.最盛期のソニーは、MS+Apple+SAMSUNGを全部合わせたような会社でしたけど、ここ10年ぐらいはいまいち感が先に立ちます.

どこでそうなったのか?

これはある人から聞いたことの受け売りですけど、なるほどそうだと思った話です.

全盛期だった1980年ごろにすでに過ちが始まっていたと考えます.企業は頭から腐るという本があったように記憶していますけど、過ちとは、役員に登用される理由が「利益を上げた人だから」になってしまったことです.フツーの会社であればそれでいいですけど、ソニーはそれじゃいけなかった.もちろん利益を上げた人が登用されるのは必要ですけど、そういう人を中枢権力者にさせてはいけなかった.ソニーの中枢は常に、なにか新しい体験を提案できないかと考てえる人々で占められている必要があったのです.たとえ無駄が多いとしてもです.

Appleのジョブズはたぶん一人でそれをやっていたのでしょう.

中枢である役員会が、新しい体験を作り出す機関でなくなって、利益を出す機関になってしまうと、部下へとそれは伝わってゆき、事業計画から新しい体験を生み出す投資がカットされる場面が頻繁になります.新しい体験を提案する商品は儲かりますが、ただ利益を出すためだけの商品は儲けが少ないです.やがて円高も利益を圧迫しはじめます.役員会が利益を出す機関になっているので、利益を出すためにますます、新しい体験を生み出す投資が打ち切られます.ここ20年ぐらいはその悪循環だったと思います.

以上が人から聞いた話です.

20年間で唯一、新しい体験を作り出したいという想いが見事に結実したビジネスとして、プレイステーションがありました.しかし、その立役者であったクタラギ氏は追放されてしまいました.利益を出す頭脳な方々にとっては、クタラギ氏のストーリーはハイリスクすぎてションベンがチビりそうになったんでしょう.

わたしはクタラギに社長になってほしかったです.彼はこういう体験をしたいっていう情熱の人がソニーで偉くなれた久しぶりの例でしたから.それと、ソニーをプロセス技術とソフトウエア技術をコアにした会社に変貌させることができる可能性をクタラギ氏は持っていました.というのは、ソニーが長年高い利益を得てきた事業分野はメカトロニクス技術だったんです.ビデオがその典型です.CRTテレビも一種の真空管でした.やがて、コア技術がLSIやHDDやLCDのようにプロセス技術主体に移り変わるにつれ、ソニーは技術的に劣勢になってゆきました.しかしコンスーマ向け商品がもはやメカトロを必要としないのもあきらかです.だから、ソニーはプロセス+ソフト技術会社に脱皮する必要があったのです.クタラギ氏は、PS3のCELLを生産するために半導体工場に投資しました.ゲームソフトのためのソフト技術者も大勢抱えました.しかし、クタラギ氏は追放され、半導体工場は東芝に売却されました.

これほどまでに壮大な投資とそれの廃棄を巡る様を見ると、企業の方針転換による出来事というよりも、新体験教と利益至上教の宗教戦争のようだったと思わずにはいられません.利益至上教が勝利したので、もはや新体験教が復活することはないのでしょうか?

いまからでも遅くないんですがね.OBの中には新体験教の人がたくさんいるわけですから、その人達にソニーを明け渡せば、ソニーは昔の輝きを取り戻せると思います.

しかしいま下馬評どおりに平井氏ですと、輝きがますます褪せて行く方向にしか進みようがないです.

4 件のコメント:

  1. 昨日10/28、NHKメ-ドイン・ジャパン逆襲シナリオだを見る予定でしたが、別の番組を見てしまった。
    でも1回目の10/27放映分は見ました。
    1回目の放映では、平井氏の方針やパワ-があまり感じられなかった。(1回目は、企業全般的の現状分析なので?)
    sonyに限らず、日本の電子技術メ-カ-がかかえる
    問題なのでその様に見えたのかも知れない。

    円高を上手く克服し、(これが、非常に難しい)、真似され無い技術開発と技術維持、そして次の技術が空き無く進めて行く事が永続的な優位を保ち販売との連携により利益を上げて行く事が出来れば安定的経営に繋がる事と、誰しも考える事だが。

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    1. $1=\80を超える円高ですと、なにやってもムダです.
      ムダだから会社が倒産するかというとそうではありませんで、ソニーもパナも名前は残り続けます.
      けれど、会社の形は維持できません.会社の形を維持できないとはどういうことかというと、日本人が開発し、日本人が企画し、日本人が設計し、日本人がIPを所有し、アジアで生産し、利益の大半を日本人が得るという形を維持できなくなる、ということです.
      \80を超える時代が長く続くとどうなるか? 日本人が企画し、その他の全てを外国人が行い、利益の大半が外国人に与えられ、利益の一部をヘッドクォーターの一部の管理者が得る.そしてIPを再生産できなくなり、技術企業としては衰退する.最終的に、かつてのRCAのようなブランド管理会社としての名前だけが残る.これは死に体と同じだと思います.ゆっくり時間をかけて倒産するのと同じだと思います.
      なので、せめて\95ぐらいまでは円安に戻さないと話になりません.\80は企業努力の限度を超えているとわたしがいうのはこういうことなんです.
      マクロ経済の判るまともな政権が円安誘導することにしかわたしは望みを感じられません.

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  2. 円高を上手く克服しは、解答の無い質問の様で、経営者からは、どうすれば良いのかと
    叱られそうです。
    何故、円安誘導をしないのか?出来ないのか?を知りたいところです。
    民主党がダメなら早く円安誘導の出来る政党に代わってくれと言いたいがそれも、
    民主党の出方しだいです。

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    1. 経営者は日本から出て行くつもりだから、円高には困ってないんでしょう.
      困っているのは交換可能パーツである労働者だけってことで.

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