2015年9月23日水曜日

【現場検証】 デニーズの天井、一枚の写真からの想像

平塚のデニーズで天井材がドシャーンと落下したそうですね.

天井材のジプトーンなんか、落ちる時は落ちるんだよ、ガタガタ云うなっと思っとったわたしです.そんなのタイヤがパンクするみたいなもんでね.

ともあれどんな風に落ちたのか興味があり、ネットで得た写真を下の方に大きくコピペしときます.

そしてその写真の感想はというと、リフォーム経験者ならわかると思うんだけど、
えぇーーっ、こういう落ち方するか??? 絶句、、、
ガタガタ云うな!は撤回させていただき、謹んでお詫びいたします.

う~ん、興味深い...末尾の現場写真から検証を進めてゆきたいと思います.

1.これジプトーンじゃないだろ?

↓ジプトーンというのは事務所でも家庭でもよく見かけるこういう天井材です.このジプトーン、雨漏りなどでボロボロになって垂れ下がってきてやがてバコッと落ちてきたりするのは、古い建屋だとありがちな光景です.だから、落ちる時にゃ落ちるんだってハナシになるわけです.
↓ジプトーンの製品サイズとしては、こんなのがポピュラーで、さらに303mm幅と、606mm幅の製品もあります.家庭では303mmサイズが多いんじゃなかろうか?
現場写真から最初に判定したいのは、いったい何サイズのジプトーンを天井材として使っていたのかです.303mm幅のジプトーンたかだか1枚が落下したとしても、ドリフのコントでたらいが落ちてくるよりもダメージは小さいですから、たいした事故にはなりません.しかしこの事故では3m四方が落ちたそうですから、そんな広範囲に一気に何枚ものジプトーンが落ちるとは不思議でなりません.

↓現場写真の着目点は、奥の壁に垂れ下がった天井材です.ブルーで囲ってあります.巨大な一枚板に見えます.破断面からするとジプトーンのような石膏系であるのは間違いなさそう.この写真からわかるのは、天井用の石膏ボードであるジプトーンではなく、壁材向けである910x1820mmの石膏ボードを天井に張ったのはないか?ということです.それ自体は問題は無いと思いますが、なにしろ巨大なので、施工も大変だし、落ちるとドリフのたらいでは済まなくなるかと想像します.
ニュースでは3m四方が落ちたとありますから、910x1820mmの石膏ボードが4枚か8枚、ドカーンと落ちたんじゃないか?と想像します.

2.石膏ボード(ジプトーン)の固定方法

石膏ボードがどのように天井に固定されるかの知識です.

↓石膏ボード(ジプトーン)を天井に固定するときには、壁材としての石膏ボードで使うのと似たネジを使います.頭が白い以外は壁用と天井用は同じなのかもしれない.
↓そのネジを打つ場所は、比較的ギリギリ狙いなんです.ネジを打つ相手は野縁材と呼ばれ、その幅は25mmしかありません.その25mmに左右から石膏ボード(ジプトーン)が突き合わされます.したがってジプトーンにネジを打つ事が許されるのは石膏ボード(ジプトーン)の端から12.5mmの範囲だけとなります.しくじって下図のオレンジの位置にネジを打ってしまったら、それは役に立たないネジになってしまいます.
天井だから作業しにくいし、仕上げ面だから鉛筆で線を書くわけにもいきません.天井屋さんは勘でネジを打ってるんじゃないかな?

3.事件現場のネジはどうか?

↓現場写真をよ~く観察すると、石膏ボード(ジプトーン)を固定するために打ったネジが野縁材に残っているのが見えます.たとえ石膏ボードが朽ち果てたとしてもネジは残っているのが普通です.ネジは150mm間隔ぐらいで打ちまくりですから、現場写真の野縁材にも連続してネジの痕跡が写っているはずなわけです.そこで、ネジが観察される部分に丸をつけてみたのがこの写真です.
丸の付き方に着目すると、短い間隔でネジの痕跡が在る部分はOKです.しかし、丸が付かない空白地帯もあります(水色で囲ったところ).

↓ネジの痕跡と、奥に垂れ下がっている壁材の残骸から、天井にどのように石膏ボードが固定されていたのかを推測したのがこの図です.
この図から読み取れる要点はこうです.
1) 910x1820mm材を奥から2枚張り、端切れを手前に張ってあった.
2) 910x1820mm材の辺をネジで固定したが、中央部にはあまりネジを打っていない
3) 接着剤を使った痕跡は無い
4) 野縁材のダメージは少ない (ゼロではないが)
5) ネジの強度不足が感じられる
こういう軽量鉄骨の天井は地震に脆弱で、3.11ではドカドカ落ちたのは知られています.

3.11で落下した天井は、野縁材がチャンネル材から脱落して全部落下という故障モードだったと伝え聞いています.

それに比較してこの平塚店の天井落下はどうかというと、野縁材はほぼ正常.ゆえに長年の地震の影響でネジ部分の石膏がグズグズになってしまい、910x1820mmの10kgぐらいの重量をネジが支えきれなくなり、前触れ無く一気に落下したのだと想像するのが妥当そうです.

4.業者の施工ミスなのか?

壁や天井に石膏ボード(ジプトーン)を使うべきなのは建築基準法で定められていますけど、その固定方法までは定めは無いんじゃないかな?

なのでこの天井を施工した業者が直ちに悪かったと言えるのか?というと、違うような気がする.

ただ、業者さんが下記の1つでも採用していれば、この事故は起きなかったとは思います.
1) 910x1820mmの石膏ボードではなく、小型のジプトーンを使えばよかった
2) ネジを中央部にもたくさん打てばよかった
3) 接着剤を使えばよかった

接着剤は軽鉄では使わないのが普通なのかな? 木天井だとボンドが塗られているのを目にします.

かしこ


人気ブログランキングへ

↓もとの現場写真

0 件のコメント:

コメントを投稿