2015年7月26日日曜日

野党はどうして不信任案を出さなかったのか?

新しいニュースが次から次へと出ては消えるため、すでに古い話題になってしまったように思われる「安保法案」ですが、衆議院での採決後に政権支持率の支持と不支持が逆転するような状態になってしまった今にして思えば、あんなに熱心に法案反対し、お仲間の機関をフル回転させてデモを組織していた野党筋は、どうして「内閣不信任案」を提出しなかったのか? わたしにはそれが不思議でなりません。

デモを組織するという後方支援のお仕事よりも、主戦場は国会なわけですから、「反対」だの「採決欠席」だのという国会テクを繰り出すのでしたら「内閣不信任案」も当然に採りうる手段の一つだったはずです。

少し時間を戻すと、委員会に召致された3人の憲法学者が「違憲」と発言してしまって以来、世論は安保法案に慎重な意見に大いに傾きました。野党もそういう世論動向を承知していたのは疑いありません。

7月16日に野党は「採決欠席」によって「強行採決」というレッテル貼りをしたわけでしたが、国会という劇場で演ずるシナリオとしては「不信任案否決」→「採決欠席」→「強行採決」という脚本の方が、はるかに強く「強行採決」の印象を国民に植え付けるコトが出来たのではなかったか?

一方の自民党ですら、衆院委員会採決の前日に石破が、「採決をやめ方がいい」と発言するなど不協和音が生じていました。石破さんはタカ派のそぶりを見せていますけど、どうも肝心なタイミングで中国からの電波を高感度で受信してしまうようで、なんか信用できん人ですな。
そもそも自民党で安倍晋三の支持者は少なく、選挙で勝った総理だから従ってはいるものの、早く安倍政権をおしまいにして、次の総理になりたいと思っている石破とか谷垣とかがうようよと居るわけで、何かのきっかけがあれば不信任案に同調する自民党議員が出ないとも限らなかった。政権支持率の下落ぶりからすると、おいそれと解散するわけにも行かなかった。衆議院で安保法案が可決した7月16日の直前の数日間は、安倍政権にとって薄氷な数日間だったのではなかったかと空想してもあながち無茶ではないのではなかろうか?

諸般の事情を考慮するに、野党にとって「内閣不信任案」を出しても何ら損はなかったし、もしかしたら棚からぼたもち的に憎き安倍政権を終わりにできた可能性も10%ぐらいあったかもしれない。

なのに、「内閣不信任案」の「な」の時も「ふ」の字も聞こえてきませんでした。どうして?

選挙するたびに議席を減らし続けてきた民主党にとっては、「解散総選挙は絶対に嫌」という心理が濃厚だったのかねぇ? だとしたら、デモに動員された大勢の野党支持者への裏切りじゃないかしら? 肝心の国会議員が死ぬ気で闘う気がなかったというコトではないかな?

選挙するたびに議席が増えている共産党にとっては、解散総選挙アレルギーは民主党ほど重症じゃないとすると、共産党からすら内閣不信任案の「な」の字も「ふ」の字も聞こえてこなかったのはますます不思議。

憶測ですが、野党陣営は次のようなコトを考えていたのではないだろうか?

野党にとっての絶対防衛ラインは、日本国憲法9条を守るコトだと想像します。諸外国ではなかなか棲息できないお花畑左翼が、なぜか日本でだけ多数棲息できているのは憲法9条があったればこそ。もしも憲法9条を廃止された日にはおまんまの食い上げだ~という事情がある。ゆえに憲法改正阻止が野党陣営にとっての絶対防衛ライン。
憲法改正阻止のためには、「戦争の出来る国になる」「徴兵制が復活する」と安倍政権を攻撃するよりも、安全保障についてたとえ半歩でも踏み出したら即「徴兵制」という意識を日本国民に植え付けるコトの方が持続的で効果的です。

今般の安保法案ごときでは、自衛隊が戦争をできるほどの前進とは云えず、ゆえに仮想敵国をビビらせる役にはあまり立たない程度なのですが、ともあれその程度の法案でも「徴兵制」という意識を日本国民に植え付けるコトに野党は成功しました。

すなわち、今の状況をこう読むのが正しいのかもしれない。
1) 野党は今般の安保法案ごときは「死ぬ気で阻止するべき」法案とは思っておらず、ゆえに「内閣不信任案」を提出してまで止めようとしなかった。
2) 安保法案衆院可決により、「徴兵制」の現実味を高めるコトができた。
3) 野党は日本国民に「徴兵制」という刷り込みに成功した。
4) ゆえに野党は、安保法案という戦術的敗北を演ずることによって、憲法改正阻止という戦略目的をより強化できた。

6:4ぐらいで野党陣営の勝ちだったんじゃないかな?
エイメン


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2 件のコメント:

  1. ソニーOB:佐藤2015年7月26日 4:16

    野党は万年野党であることが良い事で、政権なんて重い荷物は持ちたくないという発想であろう。会社で給料は高止まりでも万年平が楽でいいという話と同じ。
    また、裏取引で与党は野党に対して金を回していて、決まったシナリオを演じているとの話もあります。とりあえず反対してみました。このように反対意見も賛成意見もありながら決めていくのが民主主義と言うものですというのを強調したいということ。
    社会主義国が選挙する場合には共産党(労働党)以外の党も見かけ上作っておいて、普通選挙をして国民の民意を反映しましたというポーズと同じ。仮想反対勢力を作っておくことは大事なのです。
    後はひらさかさんの言う通りでしょうね。必要悪と言うか自分たちの存在意義を示すものを失う事は怖いんですね。

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    1. え~っ、社会党が金丸信に丸め込まれていたあの55年体制の蜜月はまだ続いているのかぁ~www
      動員されてがんばった市井の皆様にはごくろうさんでした~

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