2012年5月3日木曜日

「超大恐慌で世界の終わりが始まる」藤井厳喜を読んでみた

近頃はyoutubeで情報発信している人がいろいろいます.その中に藤井厳喜という国際政治学者がいて、世界情勢の分析がまともじゃんと思っています.その人の最新著作である「超大恐慌で世界の終わりが始まる」というまるでサードインパクトが始まるようなタイトルの本を読んでみました.再選したいオバマが懸命に景気をテコ入れしているUSAの景気が再び悪化するのか? EUではギリシャがユーロから離脱するのか? そんなことがわかるかもしれないと期待したからです.

書かれていることは、USA・EU・中国・日本・BRICs・ネット社会などいろいろです.著者は世界経済の向こう10年間の行く末に悲観的です.ユーロ圏の破綻が引き金になって世界経済はBRICsも巻き込んで2番底へ突入し、今後10年の世界経済は停滞すると予想しています.その要点を以下に記します.

●ユーロはプチ崩壊してデフレになるだろう
EUの中央銀行であるECBがユーロを刷りまくって経済成長を目指す政策を採れば安心なのだが、ドイツが財政均衡主義一本槍に固執しているので、日本のようにデフレが深刻化し、早晩ギリシャ・ポルトガルはユーロから離脱するだろう.そのためEUの不景気は10年間ぐらい続き、ユーロ安円高になる.ユーロ安のおかげでドイツだけは輸出でバカスカ儲かる.他の諸国は鳴かず飛ばず.

●USAは2番底へ向かう
商慣行により5年ローンを組んだ商業用不動産の償還時期が2012年にピークなので、住宅市況に再び危機が訪れる.2012年にはQE3をやって株価は上昇するものの実体経済は回復しない.雇用と住宅市況が回復せず、中産階級の没落は進行する.日本のようにデフレが深刻化する.

●中国は不動産バブルが崩壊する
GDPに占める投資の比率が45%と高い(日本は22%).それほど不動産がバブっている.インフレは食料価格にも波及しているが、金融政策でインフレ抑圧したくてもバブルが崩壊してしまうのでできない.そこへUSAとEUの経済不振で成長エンジンの輸出が停滞し、バブルをソフトランディングさせることができず、バブルが崩壊する.2013年に人民の不満が爆発し人民解放軍が暴動鎮圧するような事態になる.在中国の日系企業はカントリーリスクに晒されるであろう.

●BRICs
中国・ロシア・韓国は負け組.ブラジル・ポーランド・ルーマニアも負け.勝ち組は、インド・メキシコ・トルコ・インドネシア・ベトナム.著者はその分類を、労働者人口の割合が高いか低いかで判断している.

●日本
ダラダラしていて心配.

●ネット社会
facebookに個人情報がつつぬけの監視社会がやってくる.

-----
ひら感想は、
●ドイツはユーロ圏の全体幸福よりも、ドイツ第4帝国を再興する気になったんだろう.いやはやすごいことになりそうだわ.
●新自由主義の元祖USAですら、庶民レベルではTPPはおろかNAFTAにすら反対だという人が増えているそうで、新自由主義は消えて無くなってほしい.
●中国はホントにいい話を聞かないなぁ.内戦になって難民が隠岐とか北九州に溢れてこなければいいけど.....
●日本はこれ以上下手を打つのはもうヤバイです.ちゃんとマクロ経済のことがわかる政権に代えないと、アルゼンチンやポルトガルになっちゃうです.
●ネット社会への警鐘については、なすすべがないです.先日、googleがユーザーの個人情報を統合して解析させていただきますと宣言して物議を醸しましたが、あれはfacebookへの対抗のために慌てて本性を見せたということなのでしょう.

くら~い予想で嫌になっちゃった方は、こちらをclick!

人気ブログランキングへ

2 件のコメント:

  1. 識者による危機的状況予測は度々されますが、それとセットで回避方法も提示してほしいものです。回避策が提示されないと、その識者は危機的状況を待つ(自分の予測が当たる)のを望むようになると思うのですが。

    返信削除
  2. そもそもドル防衛のためにユーロを攻撃する金融戦争の側面もあるので、金融戦争をやめることが回避策であるとご高説を述べることもできるわけですけどあまり意味はなく、ドルとユーロでドンパチやってもドイツを利するだけだと理解しつつ外野から観てるしかないかなと思います.日本の経済政策については、サプライサイド経済学方式が良いのかケインズ経済学方式が良いのか、現在はデフレなのかデフレじゃないのか、現在は円高なのか円安なのか、財政再建には増税が必要なのか経済成長が必要なのか、などなどマクロ経済の状況把握すら政治勢力によって主張が逆さまですのでもうグチャグチャです.だから、提示される回避策も人によってバラバラ.わたしはリフレ派が好みですが.

    返信削除